イタリアおやじはかっこいい。
噂には聞いていたが、ここまでとは思わなかった。
イタリア人は(特に南のひとは)小柄で、背丈はわれわれとたいして変わらない。髪も瞳も黒い。スタイルだって似たようなもんだ。髪の薄いオヤジも腹の出たのもいる。遠目では日本人と大した違いはないと思うのだが。
これがもうなんか、歴然と違う。
特に若いのより、おやじがかっこいい。
通行人をパシャパシャ撮るわけにもいかず、資料写真が少ないのが残念なのだが、これは街の景色が様になるのと並んで、ローマでびっくりしたことの一つだった。
しかもなんでかっこいいのかよくわからない。
普通の、あたりまえのカッコをしているようにしか見えないのだ。
ボタン穴にバラを指してたり、白いスカーフをなびかしているわけではないのだ。
ひとつ言えることがあるとすれば、着崩しているひとはいない。
連日35℃を超える猛暑の中で、ワイシャツで歩く人や、ネクタイを緩めている人をとうとう見かけなかった。背広の人はちゃんと背広をちゃんと来て、ネクタイもきちんと締めているのである。
イタリア人は背広はもちろん、シャツ1枚でもオーダーメイドするというが、その効果なんだろうか。
そういえば、フィレンツェで靴職人をやっている日本人が出てくるテレビ番組を見たことがあった。
彼の作る靴は完全手製なので1足50万円とかするという。そんなのどんな富豪が買うんだろうと思っていたが、彼のお客さんは近所の文房具屋さんの店主とか、まあ普通の人なのである。
金の使い道が違うということなのかな。
でも、どうみても金持っているようには見えない、道端でアコーディオン弾いるおっさんも、それはそれなりにさまになっているのだ。みんながみんな、自分をどう見せるべきかを心得ているような気がする。
イタリアおやじおそるべし。
というわけで、イタリアおやじウオッチングは、ぼくと妻の旅行中のひそかな楽しみのひとつであった。イケてないのはみんな「あれはきっと観光客だろ」と片付けていたので若干客観性には欠けるのだけれども。
みなさんも機会があったらお試しを。
帰って来てから、語学教室のイタリア人のマルコ先生(仮名)に、なんでイタリアおやじはあんなにかっこいいのか聞いてみた。
イタリアの男は、おやじやおじいさんから着こなしを学ぶのだという。なるほど。あれもイタリアの伝統芸のひとつだったのか。ぼくたちが箸の持ち方を間違えておやじにひっぱたかれているときに、連中はネクタイの選び方でおやじに折檻されているのだ。洋服を着るようになってせいぜい百年程度の日本人が勝てる相手ではないわけだな。
と愚痴ったら、「・・・イタリア人はそのエネルギーをもうちょっと別のところに使うべきと思うこともありマス」とマルコ先生。
・・・そういや、電車が1時間くらい平気で遅れますね。
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